親族間売買の適正価格は?みなし贈与・譲渡所得税対策を解説【親族間売買FAQ】

親族間売買における不動産の適正価格や、みなし贈与・譲渡所得税の対策について解説する「親族間売買FAQ #05」のアイキャッチ画像。行政書士×宅建業の鉾立榮一朗事務所による財産承継ミニセミナー。 親族間売買

こんにちは、行政書士・宅地建物取引士/財産承継コンサルタントの鉾立です。

今回は、親族間売買に関してよくいただく質問に、Q&A形式で回答します。

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Q. 親族間売買の売買代金は、いくらに設定すればいいのですか?
時価より低い価格にすると「みなし贈与」になると聞きましたが、どのように価格を決めればよいのか分かりません。

親から子への不動産売買を検討しています。

いくらで売買すれば税務上の問題が生じないのか、判断基準が分からず困っています。

「相続税評価額(路線価)で売れば大丈夫」という話も聞きますが、本当にそれで問題ないのでしょうか。

また、「みなし贈与」と税務署に認定された場合、どのような流れで発覚するのかも気になっています。

A. 親族間売買の売買代金には「適正な価格レンジ」があります。
下限は相続税評価額、上限は近隣の実際の取引価格や地価公示価格などが目安です。
ただし、物件の種類やエリアなどによって注意点が異なります。

以下で詳しく解説します。

目次

  1. なぜ親族間売買では売買代金の設定が重要なのか
  2. みなし贈与とは?税務上のリスクを理解する
  3. 適正な売買代金の「レンジ」の考え方
  4. 売買代金の設定で特に注意が必要なケース
  5. 売主に発生する譲渡所得税にも注意
  6. 目的によって売買代金の設定戦略が変わる
  7. みなし贈与はどのように発覚するのか
  8. 当事務所の売買代金設定サポート
  9. よくある追加質問

1. なぜ親族間売買では売買代金の設定が重要なのか

親族間での不動産売買は、当事者同士で価格を自由に決められるように思われがちです。

しかし、税務上は「親族間だからこそ」価格の妥当性が厳しくチェックされます。

第三者同士の売買と異なり、親族間の取引は「お金のやり取りがある贈与」と見なされるリスクがあるためです。

売買代金が著しく低い場合、税務署から「実質的には贈与だった」と認定され、買主に多額の贈与税が課される可能性があります。

これが「みなし贈与」の問題です。

逆に、売買代金を高く設定すると、売主に多額の譲渡所得税が発生するケースもあります。

このように、親族間売買の売買代金設定は「税務上の適正レンジ」を意識した慎重な判断が求められます。

また、住宅ローンを利用する場合は、銀行の審査においても適正価格であることが求められます。

銀行は、売買対象の不動産について独自の担保評価を行いますが、税務リスクについて懸念事項があれば、当然審査に影響を及ぼします。

そのため、銀行にきちんと説明ができる価格を設定し、安心してもらうことが、審査を通すポイントになります。

2. みなし贈与とは?税務上のリスクを理解する

相続税法第7条には、「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があった時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があった時における当該財産の時価との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与により取得したものとみなす」と定められています。

つまり、不動産を著しく低い価格で売買した場合、「時価」と「売買代金」の差額に対して贈与税が課税されます。

例えば、時価3,000万円の不動産を1,000万円で売買した場合、差額の2,000万円に対して贈与税が課税される可能性があります。

(※参考:国税庁HP「著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」)

なお、「著しく低い価額」の明確な定義は法律上規定されていませんが、後述するとおり、相続税評価額を下回る価格は特に注意が必要です。

3. 適正な売買代金の「レンジ」の考え方

不動産の「時価」は、一律にいくらと決まっているわけではありません。

一般的には、以下のような上限と下限のレンジ(幅)の中で売買代金を設定することが、税務上の安全策とされています。

下限:相続税評価額(路線価等)が目安

みなし贈与のリスクを避けるための下限としては、一般的に相続税評価額(土地は路線価、建物は固定資産評価額を基に算出)が目安とされています。

相続税評価額は、国税庁が毎年公表する路線価(市街地の土地)や、市区町村が決定する固定資産評価額をベースに計算します。

実務上も、「相続税評価額以上の価格で売買した場合、みなし贈与と認定されたケースはほとんどない」という傾向があり、裁判例においても相続税評価額が一定の基準として参照されています。

東京地裁平成19年8月23日判決
親族間における土地の売買について、本件売買における対価は相続税評価額によっていることから、その対価は相続税法第7条の「著しく低い価額の対価」に該当しないと判示し、負担付贈与通達の適用を否定した事例

(※参考 国税庁HP 「相続税法第7条及び第9条の適用範囲に関する一考察」)

ただし、これはあくまでも「目安」であり、相続税評価額で売買すれば必ず安全というわけではありません

物件の種類やエリアによっては、さらに慎重な対応が必要です(後述します)。

上限:近隣の成約事例・地価公示等が目安

売買代金の上限の目安としては、以下のような公的な価格指標や近隣の成約事例が参考になります。

  • 地価公示価格(国土交通省、毎年3月下旬発表)
  • 都道府県地価調査価格(都道府県、毎年9月下旬発表)
  • 近隣の実際の売買成約事例(不動産流通機構のレインズ等)

これらを参考に、築年数・方位・リフォーム状況・敷地形状などの個別事情を加味して、売買代金を決定していきます。

売買代金は「この価格で設定した理由」を税務署や金融機関にきちんと説明できることが重要です。

根拠のない価格設定は、後々のトラブルの原因になります。

4. 売買代金の設定で特に注意が必要なケース

分譲マンションは路線価との乖離が大きい

戸建住宅や土地の場合、相続税評価額(路線価等)と市場価格の差は比較的小さいことが多いです。

しかし、分譲マンションの場合は注意が必要です。

特に都市部や人気エリアの分譲マンションでは、相続税評価額(路線価等)と実際の市場価格が大きく乖離しているケースが少なくありません。

例えば、市場価格5,000万円のマンションの相続税評価額が1,500万円にとどまるケースもあります。

このような物件を相続税評価額で親族間売買した場合、税務署から「著しく低い価格」と認定され、みなし贈与課税のリスクが高まります。

分譲マンションの親族間売買では、相続税評価額ではなく、近隣の実際の取引価格をベースに売買代金を設定することが重要です。

地価が急騰しているエリアも注意

近年、都市部を中心に地価が急上昇しているエリアでは、相続税評価額と実勢価格の乖離が拡大する傾向があります。

路線価は毎年1月1日時点の価格をもとに算出されるため、地価が急騰しているエリアでは実勢価格が路線価を大幅に上回ることがあります。
(路線価が実勢価格に追い付いていない状態)

このようなエリアで路線価ベースの相続税評価額で売買すると、みなし贈与のリスクが高まります。

成約事例や地価公示価格との比較を丁寧に行う必要があります。

不動産鑑定士の簡易鑑定の活用

人気分譲マンションや地価急騰エリアの物件、あるいは売買代金の根拠をより強固にしたい場合には、不動産鑑定士による簡易鑑定(調査報告書等)の作成を検討することもお勧めです。

不動産鑑定士は、国家資格を持つ不動産の価格評価の専門家です。

その評価書は、税務上の根拠資料として高い信頼性を持ちます。

一般的な住宅の簡易鑑定の費用の相場は、おおむね10〜30万円程度です(物件の種類・規模・エリアによって異なります)。

みなし贈与の追徴課税リスクと比較すれば、この費用は決して高くはないと考えられます。

5. 売主に発生する譲渡所得税にも注意

売買代金の設定で注意すべき税務リスクは、買主の「みなし贈与(贈与税)」だけではありません。

売主側にも、譲渡所得税が発生する可能性があります。

不動産の譲渡所得は、以下の計算式で求められます。

譲渡所得 = 売買代金 - (取得費 + 譲渡費用)

売主がその不動産を取得した時の価格(取得費)と売却に要した費用(譲渡費用)の合計よりも、売買代金が大きい場合に課税されます。

例えば、10年前に2,000万円で購入した不動産を3,500万円で売買した場合、差額の1,500万円(簡略計算 ※1)が譲渡所得となり、所得税・住民税(※2)が課税されます。

※建物については経過年数に応じた減価償却費を差し引きます。
※譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超える場合の税率は20.315%です。

売買代金を「高く設定すると、贈与税のリスクが下がる代わりに譲渡所得税が発生する可能性がある」という点も理解しておく必要があります。

(※参考:国税庁HP「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」)

マイホームを売ったときの特例(3,000万円特別控除)は親族間売買には原則として適用されない

マイホーム(居住用財産)を売却した場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」という特例があります。

しかし、この特例には重要な適用除外があります。

売った相手が「特別の関係がある人」である場合は、この特例を適用することができません。

「特別の関係がある人」には、以下が含まれます。

  • 直系血族(祖⽗⺟、⽗⺟、⼦、孫など)
  • 配偶者
  • 生計を一にする親族
  • 売却後、その家屋に同居する親族
  • 内縁関係にある人
  • 特殊な関係のある法人(売主が役員や株主である法人など)

この「特別の関係がある人」への売却に該当する場合は、3,000万円特別控除は利用できないと考えておく必要があります。

一方で、兄弟や親戚など、「特別の関係がある人」への売却に該当しない場合は、3,000万円特別控除が利用できるケースがあります。

譲渡所得が発生するかどうかを事前にシミュレーションしたうえで、売買代金を設定することが重要です。

(※参考:国税庁HP「マイホームを売ったときの特例」)

6. 目的によって売買代金の設定戦略が変わる

親族間売買の目的はケースによって異なります。

そして、目的によって最適な売買代金の設定の考え方も変わります

例えば、住宅ローンの残債がある不動産を親族間で売買するケースでは、実質的に「住宅ローンの借り換え」が目的であることがあります。

この場合、時価に忠実に売買代金を設定すると、既存ローンの残債を上回る金額で新たにローンを組むことになり、結果として余計な借入れが増えてしまうことがあります。

また、時価で売買すると売主に多額の譲渡所得税が発生するケースもあります。

こうした事情がある場合は、不動産全体を売買するのではなく、ローン残債相当額の持分のみを売買するスキームを検討することも有効です。

ただし、売主に残る持分の扱い(遺言書の作成・贈与など)についても、あわせて検討しておく必要があります。

7. みなし贈与はどのように発覚するのか

「親族間の売買かどうかは、税務署は分からないのでは」と思われる方もいらっしゃいます。

しかし、税務署は不動産の登記情報を取得しており、売買の事実は把握しています。

国税庁からの「お尋ね」文書

不動産を取得すると、後日税務署から「お尋ね」と呼ばれる文書が届くことがあります。

これは、贈与税の申告漏れ等がないかを確認するための照会文書です。

「お尋ね」の送付割合は、全不動産取引の約20%程度とも言われています。

「お尋ね」では主に以下の点が確認されます。

  • 買入金額(売買代金)
  • 売主の住所・氏名、あなたとの関係(親子・兄弟など)
  • 支払金額の調達方法(自己資金・ローン・贈与など)

国税庁による調査・鑑定

「お尋ね」への回答内容をもとに、税務署が「調査が必要」と判断した場合、国税庁が不動産鑑定士に依頼して時価を算出することがあります。

その結果、売買代金が時価を著しく下回ると認定された場合、時価と売買代金の差額に対して贈与税が課税されます。

無申告であった場合には、無申告加算税や延滞税も加算されます。

「なんとなく合意で設定した」という根拠の薄い価格設定は、事後的に大きなリスクを招く可能性があります。

8. 当事務所の売買代金設定サポート

当事務所(当社)では、売買代金の設定にあたり、以下の観点を総合的に検討した上で、税務署・金融機関に対してきちんと説明できる価格をお客様にご提案しています。

  • 売買当事者の事情・目的
  • 既存ローンの残債額
  • 買主の住宅ローン借入可能額
  • 複数の公的評価指標(地価公示・都道府県地価調査、路線価、固定資産評価額)
  • 不動産の当初購入価格(取得費)・譲渡所得のシミュレーション
  • 周辺の売買成約事例(事例比較方式)
  • 築年数・建材グレード・リフォーム状況(原価方式)
  • 敷地形状など不動産固有の特徴

また、贈与税・相続税など資産税分野に明るいパートナー税理士と連携しており、必要に応じて税務面からも価格の妥当性を確認しながらサポートを進めます。

分譲マンションや地価急騰エリアの物件など、路線価と市場価格の乖離が大きいケースでは、不動産鑑定士による調査報告書等の作成をお勧めする場合もあります。

9. よくある追加質問

Q9-1. 「路線価で売れば贈与税は大丈夫」という話を聞きましたが、本当ですか?

A. 実務上、相続税評価額(路線価等)以上の価格で売買した場合、みなし贈与と認定されたケースはほとんどないとされており、一定の目安として機能しています。

しかし、「路線価以上なら必ず安全」という法律上の明確な規定はありません。

特に、分譲マンションや地価が急騰しているエリアの物件では、路線価と時価の乖離が大きく、相続税評価額ベースの価格でも「著しく低い価額」と認定されるリスクがあります。

物件の種類やエリアに応じて、慎重に検討することが大切です。

Q9-2. 固定資産評価額と路線価はどちらを使えばいいですか?

A. 相続税評価額の計算には、市街地の土地であれば主に路線価(国税庁が発表)を使います。

路線価が設定されていない地域では、固定資産評価額に一定の倍率をかけた「倍率方式」で計算します。

建物については、固定資産評価額がそのまま相続税評価額として使われます。

なお、分譲マンションなど市場価格との乖離が大きい物件では、これらの評価額のみを根拠とすることはリスクがあります。

近隣の成約事例との比較も必ず行うようにしてください。

Q9-3. 「お尋ね」が来なければ、みなし贈与の問題は発生しませんか?

A. そうとは限りません。

「お尋ね」が届かなかったとしても、別の税務署の調査(相続など)によって後になってから問題が発覚するケースもあります。

また、贈与税の申告が必要であるにもかかわらず申告しなかった場合、時効は原則として6年(悪意のある場合は7年)となっており、長期にわたってリスクが続きます。

「お尋ね」が届くかどうかに関わらず、売買時点で適正な価格設定と必要に応じた申告を行うことが大切です。

Q9-4. 不動産鑑定士の鑑定はいつ取得すればいいですか?

A. 売買契約の締結前に取得することをお勧めします。

売買代金を決定する前に時価の客観的な根拠を押さえておくことで、価格設定の合理性を事前に担保できます。

Q9-5. 相談だけでも費用はかかりますか?

A. 当事務所では、『無料個別相談』を実施しています。

売買代金の設定方法についても個別にご相談に対応しますので、お気軽にご連絡ください。

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豊富な知識・経験・事例を持つ「財産承継手続きの専門家」 行政書士 鉾立榮一朗事務所 代表 Change&Revival株式会社 代表取締役 (宅地建物取引業免許 東京都知事(3)第94647号) 行政書士・宅地建物取引士 財産承継コンサルタント 財産・事業に関わる各種手続きでお困りの方を “専門家の知恵” と “最適な手法” でサポートする財産承継手続きの専門家。 20代会社員のとき、実家の金銭問題をそばで支えた体験から、お金や不動産など財産の問題で困っている人のサポート役になろうと決意。 その後、司法書士・行政書士・土地家屋調査士の合同事務所で働きながら、法務手続き実務を体得。 前職の財産・企業再生コンサルティング会社では、地域金融機関の専属アドバイザーとして年間50件以上の顧客相談に対応し、「身近に相談できる人がいない」、「知り合いに相談してみたが、満足な回答が得られない」と悩む個人や企業の財産問題・経営問題の解決に従事する。 専門は、相続・遺言、親族間の不動産売買・贈与、家族信託、会社設立・営業許認可申請等の各種法務実務の実践。 相談者の悩みを解決する最適な手法・手続きを提案し、必要に応じて適材適所、各分野の専門家をコーディネートする。
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