相続手続きで、亡くなった人名義の不動産を調べる方法は?

こんにちは、財産承継コンサルタント/行政書士の鉾立です。

今回は、相続手続きに関してよくいただく質問に、Q&A形式で回答します。

 


 

Q. 亡くなった人名義の不動産の名義を変えるにあたって、何から、どのように調べたらいいのでしょうか?

母が亡くなり、相続手続きを進めています。

母は、私と共有名義になっている自宅のほかに、地方に賃貸不動産(貸家)を所有していました。

これから母名義の不動産の名義を変えるにあたって、何から、どのように調べたらいいのでしょうか?

 

A. まず、手がかりとなる資料を集めます。
その後、不動産を管轄する法務局で登記事項証明書等を取得します。

亡くなった方名義の不動産の名義を変えるには、まず、その方名義の不動産を漏れなく特定する必要があります。

万が一、亡くなった方名義の不動産に漏れがある状態で中途半端に名義を変えた場合、後日、不動産の売却や担保の設定の際に、改めて漏れがあった不動産について遺産分割協議を行わなければならないことがあります。

そのためにはまず、手がかりとなる資料を集め、その後、不動産を管轄する法務局(登記所)で登記事項証明書等を取得します。

 

1. 手がかりとなる資料を集める

1-1. 固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書

最初に確認したいのが、固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書になります。

固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日時点の不動産の所有者にかかる税金です。

毎年4月~6月頃、不動産の所有者宛に、不動産が所在する市町村(東京23区の場合は都税事務所)から納税通知書が送られてきます。

その納税通知書の中に、課税明細書という書類が入っています。

この課税明細書に、

  • 土地については、所在・地番・地目・地積・評価額
  • 家屋については、所在・家屋番号・種類・構造・床面積・評価額

などの情報が記載されています。

 

1-2. 土地家屋名寄帳の取得

固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書が見当たらないときは、不動産が所在する市町村(東京23区の場合は都税事務所)で、土地家屋名寄帳を取得します。

土地家屋名寄帳とは、市町村(東京23区の場合は各区の都税事務所)ごとに、課税の対象になっている不動産を所有者ごとに一覧表にまとめた書類になります。

取得する際の注意点としては、亡くなった方の土地家屋名寄帳を取得できるのは、亡くなった方の相続人(または、その相続人から委任を受けた代理人)であるという点です。

相続人であることを証明するためには、申請窓口で

亡くなった方の死亡の記載のある戸籍謄本
・亡くなった方の相続人であることを証明できる戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本等
・代理人の場合は委任状

を提示する必要があります。

また、土地家屋名寄帳を取得するときに、相続登記で使用することになる評価証明書一緒に取得しておくと良いでしょう。

なお、土地家屋名寄帳や評価証明書は、郵送で請求することも可能です。

 

1-3. 不動産を購入・建築・相続・贈与したときなどの資料

また、不動産を購入・建築・相続・贈与したときなどの資料も参考資料となります。

例えば、不動産を購入したときは、通常、買主に権利証(あるいは登記識別情報通知)が交付されます。

権利証(あるいは登記識別情報通知)には、不動産の所在・地番・家屋番号等の情報が記載されています。

また、登記(名義変更)の完了時に、通常は法務局(登記所)で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得します。

この登記事項証明書(登記簿謄本)にも、不動産の所在・地番・家屋番号等の情報が記載されています。

 

2. 法務局(登記所)で調査する

手がかりとなる資料を集めたら、続いて不動産を管轄する法務局(登記所)で調査を行います。

※ご参考 法務局 管轄のご案内

※なお、登記情報サービスを利用すれば、インターネット上で調査することも可能です。

登記情報提供サービス

 

2-1. 対象不動産(土地・建物)の登記事項証明書

法務局(登記所)では、まず、手がかりとなる資料を基に特定した土地・建物について、登記事項証明書を取得します。

申請の際のポイントは、「共同担保目録」付きで申請することになります。

共同担保目録とは、金融機関などからお金を借りて不動産を担保に入れたときに当該不動産の他に共同で担保に入れた土地・建物が記載された目録になります。

この目録に記載された土地・建物で、事前に把握していない土地・建物があった場合は、亡くなった方名義の不動産である可能性があるため、その土地・建物についても登記事項証明書を取得して名義を確認します。

申請書の書き方について分からないことがあれば、申請窓口で相談すれば親切に教えてもらえるでしょう。

 

2-2. 地図・公図、建物図面・各階平面図

手がかりとなる資料を基に登記事項証明書を取得しただけでは、亡くなった方名義の不動産に漏れがある可能性があります。

典型的なのが、

  • 敷地が複数の筆に分割されている場合(特に角地の隅切りなど)
  • 私道の共有持ち分や、分割された私道

になります。

そこで、土地については、建物の敷地や、地積が大きい土地などの地番を特定して、地図・公図を取得します。

また、建物については、建物図面・各階平面図を取得します。

 

2-3. 周辺の土地の所有者事項証明書(要約書)、登記事項証明書

2-2. で取得した地図・公図、建物図面・各階平面図を確認し、亡くなった方名義の土地の周辺の土地、特に、

  • 建物の敷地となっている土地
  • 隣接している土地
  • 私道と思われる土地

について、手数料が安い所有者事項証明書(要約書)を取得します。

また、所有者事項証明書(要約書)に亡くなった方の住所・氏名が載っていれば、当該土地の登記事項証明書を取得します。

 

3. 専門家に依頼する方法もある

ここまで解説したように、亡くなった方名義の不動産を調査するには、ある程度の知識と時間が必要となります。

また、万が一、亡くなった方名義の不動産に漏れがある状態で中途半端に名義を変えた場合、後日、不動産の売却や担保の設定の際に、改めて漏れがあった不動産について遺産分割協議を行わなければならないことがあります。

特に、

  • 不動産が複数ある
  • 不動産が地方にある
  • 自分で調べる時間がない
  • 自分で調べてミスするのが怖い

ときは、相続実務に長けた行政書士や、司法書士といった専門家に不動産の調査を依頼する方法もあります。

当事務所でも、これまで多くのお客様の相続手続きをサポートしておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

相続・遺産分割手続きの解決事例(お客様の声)

 


 

以上、ご参考になさってみてください。

では、次回の【財産承継ミニセミナー】でまたお会いしましょう。

 

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この記事を執筆している専門家
鉾立 栄一朗

財産承継コンサルタント
/行政書士・宅地建物取引士

行政書士 鉾立榮一朗事務所 代表
Change&Revival株式会社 代表取締役 

法律に関わる各種手続きでお困りの方を “専門家の知恵” と “最適な手続き” でバックアップする法律手続アドバイザー。

会社員時代、実家の金銭問題をそばで支えた体験から、事業や財産の問題で困っている人のサポート役になろうと決意。

合同法務事務所で働きながら行政書士の資格を取得するも、流れ作業的な書類作成・申請手続代行といった依頼者の想いや意思決定プロセスに関われないポジションに限界を感じ、相談業務を習得すべく経営(企業再生)コンサルティング会社に入社。

地域金融機関の専属アドバイザーとして年間50件以上の顧客相談に対応し、「身近に相談できる人がいない」、「知り合いに相談してみたが、満足な回答が得られない」と悩む企業や個人の経営問題・財産問題の解決に従事する。

専門は、相続・遺言、贈与・売買、営業許認可申請等の各種法務実務の実践。相談者の悩みを解決する最適な手続き・手法を提案し、必要に応じて適材適所、各分野の専門家をコーディネートする。

家族は、妻と息子と猫(キジトラ雄)。

毎月第1土曜日に『無料個別相談』実施中。
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