相続放棄したいのですが、どうしたらいいでしょうか?「家庭裁判所で行う相続放棄」と「事実上の相続放棄」の違い

こんにちは、財産承継コンサルタント/行政書士の鉾立です。

今回は、相続手続きに関してよくいただく質問に、Q&A形式で回答します。

 


 

Q. 相続放棄したいのですが、どうしたらいいでしょうか?

一度も会ったことがない親類から、突然、相続手続きに協力してほしいという内容のお手紙が来ました。

亡くなった方は、既に他界している私の父の、母親にあたる方だそうです。

事情も経緯も良く分からないので、相続放棄したいのですが、どうしたらいいでしょうか?

 

A. いわゆる「相続放棄」には、大きく2種類あります。
「家庭裁判所で行う相続放棄」と、「事実上の相続放棄」です。
それぞれに、メリットとデメリットがあります。

 

【相続放棄の種類について】

メリット デメリット
1. 家庭裁判所で行う相続放棄
(「相続の放棄の申述」)
プラスの財産もマイナスの財産もすべての財産を完全に放棄することができる。 ・決められた期間内に、必要書類を揃えて家庭裁判所に相続の放棄の申述をしなければならず、手続きが煩雑。

・自分以外の相続人に債務が引き継がれるなど、事情を知らない相続人に迷惑がかかることがある。

2. 事実上の相続放棄 遺産分割協議書に署名・実印押印し、印鑑証明書を提出するだけで済むので、手続きが簡便。 借金などの債務の相続を免れ得ない。

 

1. 「家庭裁判所で行う相続放棄」のメリットとデメリット

家庭裁判所で行う相続放棄は、「相続の放棄の申述」といいます。

家庭裁判所で行う相続放棄のメリットは、亡くなった方のプラスの財産もマイナスの財産もすべての財産を完全に放棄することができる点にあります。

なお、家庭裁判所に相続の放棄の申述が受理されると、申述した人は初めから相続人ではなかったものとみなされるため、申述した人の子などの直系卑属について、代襲相続が発生することはありません。

逆に、家庭裁判所で行う相続放棄のデメリットは、決められた期間内(原則として、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内。ただし、申立てにより期間を延ばすことも可能。)に戸籍謄本等の必要書類を揃えて家庭裁判所に相続の放棄の申述をしなければならず、手続きが煩雑という点になります。

また、家庭裁判所に相続の放棄の申述が受理されることにより、自分以外の相続人に債務が引き継がれたり、同順位の相続人全員が家庭裁判所に相続の放棄の申述を行うことによって、次順位の人が相続人となって債務が引き継がれたりするなど、事情を知らない他の相続人に迷惑がかかるといったことがあります。

たとえば、亡くなった方の子供の全員が家庭裁判所に相続の放棄の申述をすると、亡くなった方の直系尊属(父母等)が相続人となります。

更に、直系尊属(父母等)がすでに亡くなっていたり、直系尊属(父母等)が家庭裁判所に相続の放棄の申述をしたりする場合は、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人となります。

このように、亡くなった方の借金などの債務を身内が完全に免れるためには、配偶者を含めて、すべての相続人が順次、または同時に、家庭裁判所に相続の放棄の申述をする必要があります。

 

2. 「事実上の相続放棄」のメリットとデメリット

事実上の相続放棄とは、主に遺産分割協議書の中で相続を放棄することをいいます。

事実上の相続放棄のメリットは、「自分に相続分はない」との内容の遺産分割協議書に署名・実印押印し、印鑑証明書を提出するだけで済むので、手続きが簡便という点になります。

逆に、事実上の相続放棄のデメリットは、借金などの債務の相続を免れ得ないという点になります。

 

なお、実務上は、

  • そもそも借金がない
  • 借金はあるが、特定の相続人だけが借金を引き継ぐことについて債権者から同意を得られている

のであれば、簡便な手続きである事実上の相続放棄をお勧めしています。

 


 

以上、ご参考になさってみてください。

では、次回の【財産承継ミニセミナー】でまたお会いしましょう。

 

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この記事を執筆している専門家
鉾立 栄一朗

財産承継コンサルタント
/行政書士・宅地建物取引士

行政書士 鉾立榮一朗事務所 代表
Change&Revival株式会社 代表取締役 

法律に関わる各種手続きでお困りの方を “専門家の知恵” と “最適な手続き” でバックアップする法律手続アドバイザー。

会社員時代、実家の金銭問題をそばで支えた体験から、事業や財産の問題で困っている人のサポート役になろうと決意。

合同法務事務所で働きながら行政書士の資格を取得するも、流れ作業的な書類作成・申請手続代行といった依頼者の想いや意思決定プロセスに関われないポジションに限界を感じ、相談業務を習得すべく経営(企業再生)コンサルティング会社に入社。

地域金融機関の専属アドバイザーとして年間50件以上の顧客相談に対応し、「身近に相談できる人がいない」、「知り合いに相談してみたが、満足な回答が得られない」と悩む企業や個人の経営問題・財産問題の解決に従事する。

専門は、相続・遺言、贈与・売買、営業許認可申請等の各種法務実務の実践。相談者の悩みを解決する最適な手続き・手法を提案し、必要に応じて適材適所、各分野の専門家をコーディネートする。

家族は、妻と息子と猫(キジトラ雄)。

毎月第1土曜日に『無料個別相談』実施中。
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