相続人の中に行方不明者がいる場合、相続手続きはどうなる?

こんにちは、行政書士/財産承継コンサルタントの鉾立です。

今回は、相続手続きに関してよくいただく質問に、Q&A形式で回答します。

 


Q. 縁を切った相続人がいるのですが、相続手続きはどのように進めればいいでしょうか?

父が亡くなり、これから銀行の預金の解約相続手続きを行う予定です。

銀行からは、父の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の署名・実印押印、相続人全員の印鑑証明書を揃えてください、と言われています。

父の相続人は、長男の私と、二男の弟のみです。

ですが、弟とは縁を切った状態で、もう数十年連絡をとっておらず、彼が今どこに住んでいるのかも知りません。

このような場合、いったいどのように手続きを進めればいいのでしょうか?

 

A. 戸籍の附票を取得し、現在の住所地を調査しても所在が不明の場合は、家庭裁判所の手続きを行うことになります。

 

行方不明の相続人の戸籍の附票を取得する

行方不明の相続人の住所を調べるには、まず、その人の本籍地がある市区町村に、「戸籍の附票」を請求することになります。

戸籍の附票とは、本籍地のある市区町村で戸籍の原本と一緒に保管している書類で、その戸籍が作成されてから(またはその戸籍に入籍してから)現在に至るまで(またはその戸籍から除籍されるまで)の住所が記録されている書類になります。

実務的には、相続人の戸籍謄本を市区町村に請求する際に、戸籍の附票も一緒に請求し、相続人の現住所を調べます。

現住所が分かれば、そこに相続手続きを進めたい旨を書いたお手紙を出したり、実際に家に訪問したりすることでその相続人の方の意向を確認します。

 

家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる

もっとも、戸籍の附票を取得しても、最後の住所地が取り消し線で消されていて(職権消除)、現在の住所が分からない場合があります。

この場合は、役所もその方の所在を把握できていないという状態であるため、探し出すのは極めて困難な状況となります。

このように、戸籍の附票を取得しても相続人の行方が不明の場合、遺産分割協議を進めるためには、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てと、不在者財産管理人権限外行為許可の申立てを行うことになります。

申立てができる人は、利害関係人(不在者の配偶者、相続人にあたる者、債権者など)と検察官です。

不在者財産管理人選任の申立ては、不在者の従来の住所地の家庭裁判所に対して行います。

例えば、不在者の従来の住所地が東京23区内の場合は、申立先は東京家庭裁判所になります。

※ご参考 東京23区内以外の場合の管轄については、裁判所|裁判所の管轄区域をご参照ください。

申立書には、不在者財産管理人の候補者名を記載することができますが、家庭裁判所は必ずしもがこれに拘束されるわけではありません。

なお、不在者財産管理人は親族もなることができますが、遺産分割協議を行う場合、利害関係のある相続人が不在者財産管理人になることはできません。

また、不在者財産管理人は、不在者の利益を保護することが求められるため、遺産分割協議の際は、不在者の法定相続分を確保することが原則となります。(例えば、「不在者の相続分は無い」とするような遺産分割協議を行うことはできません。)

 

家庭裁判所に失踪宣告を申し立てる

不在者財産管理人の仕事は、遺産分割協議が終わっても終了とはなりません。

・不在者が現れたとき
・不在者の死亡が確認されたとき

まで、ずっと不在者財産管理人の仕事は続くことになります。

そこで、実務的には、行方不明の期間が7年を超えるなど、失踪宣告の要件を満たすタイミングで、行方不明の相続人について失踪宣告の申立てを行うケースが多いようです。

失踪宣告とは、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。

この場合、行方不明者が亡くなったものとして、最終的にその行方不明者の相続として処理することになります。

 

このQ&Aに関する補足コメント

このQ&Aのように、相続人の中に行方不明者がいる場合は、相続手続きが非常に煩雑になります。

生前に遺言書を作成しておけば、遺産分割協議書を作成する必要はありません。

本ケースのような場合は、後の手続きのためにも、生前に遺言書を作成を検討すると良いでしょう。

 


以上、ご参考になさってみてください。
では、次回の【財産承継ミニセミナー】でまたお会いしましょう。

 

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行政書士 鉾立榮一朗事務所 代表 Change&Revival株式会社 代表取締役 行政書士・宅地建物取引士/財産承継コンサルタント  法律に関わる各種手続きでお困りの方を “専門家の知恵” と “最適な手続き” でバックアップする法律手続アドバイザー。  会社員時代、実家の金銭問題をそばで支えた体験から、事業や財産の問題で困っている人のサポート役になろうと決意。  合同法務事務所で働きながら行政書士の資格を取得するも、流れ作業的な書類作成・申請手続代行といった依頼者の想いや意思決定プロセスに関われないポジションに限界を感じ、相談業務を習得すべく経営(企業再生)コンサルティング会社に入社。  地域金融機関の専属アドバイザーとして年間50件以上の顧客相談に対応し、「身近に相談できる人がいない」、「知り合いに相談してみたが、満足な回答が得られない」と悩む企業や個人の経営問題・財産問題の解決に従事する。  専門は、相続・遺言、贈与・売買、営業許認可申請等の各種法務実務の実践。  相談者の悩みを解決する最適な手続き・手法を提案し、必要に応じて適材適所、各分野の専門家をコーディネートする。 家族は、妻と息子と猫(キジトラ雄)。