遺言執行者の記載がない遺言書。その後の手続きはどうすればいい?

こんにちは、行政書士/財産承継コンサルタントの鉾立です。

今回は、遺言の作成に関してよくいただく質問に、Q&A形式で回答します。

 


Q. 遺言執行者の記載がない遺言書の場合、その後の手続きはどうすればいいでしょうか?

預金の相続手続きのため、検認手続き済みの自筆証書遺言を銀行に持参したところ、「遺言書に遺言執行者の記載がないため、この遺言書だけでは手続きができません」と言われてしまいました。

この後の手続きはどうすればいいでしょうか?

A. 円滑に手続きを行うためには、家庭裁判所で遺言執行者選任申立て手続きを行う必要があります。

円滑に手続きを行うためには、家庭裁判所で遺言執行者選任申立て手続きを行う必要があります。

以下、遺言執行者申立て手続きの概要と、手続きの流れについて解説します。

遺言執行者選任申立て手続きとは?

遺言執行者とは、「遺言書の内容を実現する者」のことを言います。

公証役場で作成する公正証書遺言の場合は、遺言執行者を定めていることがほとんどですので、あまり問題になりませんが、自分で作成する自筆証書遺言の場合、遺言執行者を定めていないと、実際の相続手続きの際に問題が生じるケースがあります。

また、公正証書遺言、自筆証書遺言の別を問わず、遺言執行者を定めていた場合であっても、遺言執行者が辞任したり、死亡したりした場合など、実際の相続手続きの際に遺言執行者がいない、という事態が起こりえます。

遺言執行者を定めていない、または遺言執行者がいなくなった場合でも、遺言書としては有効です。

しかし、いざ遺言書の内容を実現しようとするとき、例えば、預金の相続手続きを行う際に、遺言執行者がいないと、金融機関から相続人全員の戸籍謄本・実印・印鑑証明書を求められるケースがあります。

せっかく円滑に相続手続きを行うために遺言書を作成したにも関わらず、これではかえって手続きが煩雑になってしまいます。

そこで、遺言書によって遺言執行者が指定されていないとき、または、遺言執行者がいなくなったときは、家庭裁判所に申立てをすることにより、事後的に、遺言執行者を選任することができます。

なお、自筆証書遺言の場合は、検認手続きを行ったあと、遺言執行者選任申立て手続きを行うことになります。

【参考記事】
検認手続きとは?どのような流れで手続きを進めるの?

遺言執行者選任申立て手続きの流れ

遺言執行者選任申立て手続きの流れは以下のようになります。

1.申立てに必要な書類を集める

まず、申立てに必要な書類を集めます。

必要書類については、裁判所webサイトの「遺言執行者の選任」ページに詳しく書かれていますので、そちらから引用します。

・遺言者の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本(全部事項証明書)(申立先の家庭裁判所に遺言書の検認事件の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)は添付不要)

・遺言執行者候補者の住民票又は戸籍附票

・遺言書写し又は遺言書の検認調書謄本の写し(申立先の家庭裁判所に遺言書の検認事件の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)は添付不要)

・利害関係を証する資料(親族の場合,戸籍謄本(全部事項証明書)等)

※ もし,申立前に入手が不可能な戸籍等がある場合は,その戸籍等は申立後に追加提出することでも差し支えありません。

※ 審理のために必要な場合は,追加書類の提出をお願いすることがあります。

なお、戸籍謄本等の公的書類は、3か月以内に発行されたものが必要となります。

2.申立書と必要書類等を家庭裁判所に提出する

申立ができる人は、相続人、遺言者の債権者、遺贈を受けた者など、利害関係人になります。

申立て先の家庭裁判所は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所となります。

例えば、遺言者の最後の住所地が東京23区内であれば、申立て先は東京家庭裁判所になります。

※申立て先の家庭裁判所は、裁判所webサイトの「裁判所の管轄区域」から調べることができます。

また、申立書記入例は、裁判所webサイトの「遺言執行者の選任の申立書」からダウンロードすることができます。

なお、申立書には、遺言執行者の希望候補者を記載する項目があります。

ここには、

・相続人
・親族
・専門家

など、遺言執行者として選任することを希望する候補者の住所・連絡先・氏名等を記載します。

申立てに必要な費用は、

・収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手

となります。

連絡用の郵便切手の種類・枚数は、申立てをする家庭裁判所に確認するのが間違いないですが、東京家庭裁判所の場合は、

82円 × 10枚,10円 × 10枚(合計920円分)
となります。(2019年8月29日時点)
(各家庭裁判所のウェブサイトの「裁判手続を利用する方へ」中に掲載されている場合もあります。)

申立書収入印紙郵便切手が揃ったら、1.で集めた必要書類とあわせて家庭裁判所に提出します。

なお、申立て書類の提出は、郵送で行うことができます。

3.家庭裁判所から照会書が届く

申立て書類を提出後、問題がなければ、1ヵ月ほどで家庭裁判所から「照会書」が申立人と遺言執行者候補者の住所宛てに届きます。

 通知書には、

・遺言者の遺言書の内容を知っていますか。
・遺言者の相続人が誰であるか知っていますか。
・遺言者の遺産に関して、相続人間に争いがありますか。

などの質問が記載されています。

これらの質問に回答し、期日までに、回答書を家庭裁判所に返信します。

4.家庭裁判所から遺言執行者選任の審判書が届く

問題がなければ、2~3週間ほどで家庭裁判所から「遺言執行者選任審判書」が申立人と遺言執行者の住所宛てに届きます。

5.遺言書と遺言執行者選任審判書を使って相続手続きを行う

遺言書と遺言執行者選任審判書を使って、選任された遺言執行者が預貯金等の解約・払い戻し等の各種相続手続きを行います。

【関連記事】
相続法改正② 法務局における遺言書の保管等に関する法律について

 


 

以上、ご参考になさってみてください。

では、次回の【財産承継ミニセミナー】でまたお会いしましょう。

 

※ご参考
公正証書遺言作成手続きの流れ・手順・ポイント

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行政書士 鉾立榮一朗事務所 代表 Change&Revival株式会社 代表取締役 行政書士・宅地建物取引士/財産承継コンサルタント  法律に関わる各種手続きでお困りの方を “専門家の知恵” と “最適な手続き” でバックアップする法律手続アドバイザー。  会社員時代、実家の金銭問題をそばで支えた体験から、事業や財産の問題で困っている人のサポート役になろうと決意。  合同法務事務所で働きながら行政書士の資格を取得するも、流れ作業的な書類作成・申請手続代行といった依頼者の想いや意思決定プロセスに関われないポジションに限界を感じ、相談業務を習得すべく経営(企業再生)コンサルティング会社に入社。  地域金融機関の専属アドバイザーとして年間50件以上の顧客相談に対応し、「身近に相談できる人がいない」、「知り合いに相談してみたが、満足な回答が得られない」と悩む企業や個人の経営問題・財産問題の解決に従事する。  専門は、相続・遺言、贈与・売買、営業許認可申請等の各種法務実務の実践。  相談者の悩みを解決する最適な手続き・手法を提案し、必要に応じて適材適所、各分野の専門家をコーディネートする。 家族は、妻と息子と猫(キジトラ雄)。