認知症の相続人がいる場合、相続手続きはどうなる?

こんにちは、財産承継コンサルタント/行政書士の鉾立です。

今回は、相続手続きに関してよくいただく質問に、Q&A形式で回答します。

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Q. 認知症の相続人がいる場合、相続手続きはどのようになるのでしょうか?

私の姉夫婦には子供がいません。

万が一、姉に相続が発生した場合、相続人は、姉の夫と、私を含む姉のきょうだい達になります。

ただ心配なのは、姉の夫が最近、認知症気味であることです。

認知症の相続人がいる場合、相続手続きはどうなるのでしょうか?

 

A. 相続人の中に認知症の方がいる場合、本人の判断能力の状況に応じて成年後見制度の利用を検討することになりますが、「現実的な対応」についても検討した方が良いでしょう。

 

遺言書を作成していれば遺言書の内容に従いますが、遺言書を作成していない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。

このとき、相続人の中に認知症の方がいる場合は、本人の判断能力の状況に応じて、原則的には成年後見制度の利用を検討することになりますが、「現実的な対応」についても検討した方が良いでしょう。

成年後見制度の利用

遺産分割協議をする場合、相続人の方に判断能力が備わっていることが前提となります。

しかし、物忘れがひどい、話している相手が誰だかわからない、など、判断能力が低下している方が相続人にいる場合は、成年後見制度を利用することが原則となります。

具体的には、本人の判断能力の状況に応じて家庭裁判所に成年後見の申立てを行い、後見人が選任された後、その後見人が本人に代わって遺産分割協議を行うことになります。

もっとも、この成年後見申立て手続きは、

  • 書類の準備が煩雑
  • 時間がかかる(概ね3~6ヶ月)

など、なかなか大変な手続きです。

また、無事に成年後見人等が選任されたとしても、

  • 本人の収支状況や財産内容を定期的に(1~3年に1回)家庭裁判所に報告しなければならないため、本人の収入・財産を親族に融通することなどが困難になる。
  • 本人の財産を保護することが成年後見制度の趣旨であるため、相続税対策を目的とする生前贈与や、親族が経営する会社に対する貸付け・担保提供などは、原則として出来なくなる。
  • 本人の財産が大きい場合や(概ね3000万円~5000万円以上)、後見人等になる人が高齢の場合は(概ね70歳以上)、第三者の後見監督人(弁護士等)が選任され、別途報酬を支払う必要がある。

など、様々な制約がでてきます。

※成年後見申立て手続きの詳細についてはこちらの記事をご参照ください。
成年後見申立て手続きの流れ・ポイント

現実的な対応について

そこで、実務的には、成年後見制度の利用の前段階に、次のような「現実的な対応」について検討することがあります。

認知症の方ご本人の了承を得る

一口に認知症と言っても、本人の状況は様々です。

例えば、

・知らない人と話をするときは、しっかりと受け答えする
・難しい話でも、大きな声で分かりやすく話すと理解してくれる
・昔の親・きょうだいなどの話をすると記憶が鮮明によみがえってくる

など。

本人にとって訳が分からないのに無理やり遺産分割協議書に署名・押印させることは絶対にしてはなりませんが、法律専門家等が、ゆっくりと、本人に分かりやすく説明することで、遺産分割についての了承を得らえることがあります。

認知症の方を除く被相続人の相続人全員、認知症の方の推定相続人全員の了承を得る

もっとも、本人から遺産分割についての了承を得られたとしても、後々、他の家族から「正常な判断能力があったとは考えられない。あの遺産分割協議は無効だ」とクレームが出る可能性があります。

そのためには、

・認知症の方を除く、被相続人の相続人全員
・認知症の方の推定相続人全員 

からも、事情を伝えたうえ、遺産分割協議の方針についての了承を得た方が良いでしょう。

認知症の方を含めて法定相続分で分ける

後々、他の家族からクレームが出る可能性が高いケースとしては、認知症の方本人の相続分が無かったり、著しく少なかったりするケースが考えられます。

そこで、遺産分割協議では、認知症の方も含めて平等に法定相続分で分けることを検討すると良いでしょう。

このQ&Aに関する補足コメント

このQ&Aのように、相続人の中に認知症の方がいる場合の相続手続きは、簡単にはいかないケースが多くなります。

ご相談者のケースでは、後の手続きのためにも、早々にお姉様が遺言書を作成しておくと良いでしょう。

 

以上、ご参考になさってみてください。

 


 

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