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家族信託の基本的知識、手続きの流れ・方法を専門家が分かりやすく解説

円滑な財産承継を実現する手法として、遺言や生前贈与と並び注目され、近年普及が進んでいる家族信託。
 
このページでは、家族信託を検討されていて、情報を集めている方のために、家族信託のメリット・デメリット、スキームなどの基本的知識、手続きの流れ・方法、具体的事例について、分かりやすく解説しようと思います。

この記事を執筆している専門家
鉾立 栄一朗

財産承継コンサルタント/行政書士・宅地建物取引士
行政書士 鉾立榮一朗事務所 代表
Change&Revival株式会社 代表取締役
(宅地建物取引業免許 東京都知事(3)第94647号)
鉾立 栄一朗
法律に関わる各種手続きでお困りの方を “専門家の知恵” と “最適な手続き” でバックアップする法律手続アドバイザー。
前職の経営(企業再生)コンサルティング会社では、地域金融機関の専属アドバイザーとして年間50件以上の顧客相談に対応し、「身近に相談できる人がいない」、「知り合いに相談してみたが、満足な回答が得られない」と悩む企業や個人の経営問題・財産問題の解決に従事する。
専門は、相続・遺言、贈与・売買、家族信託、会社設立・営業許認可申請等の各種法務実務の実践。
相談者の悩みを解決する最適な手続き・手法を提案し、必要に応じて適材適所、各分野の専門家をコーディネートする。
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1. 家族信託とは何か?

 

 
家族信託とは、端的に言うと、ご本人の財産の管理・運用・処分を、信頼できる家族に託すことができる制度になります。
 
成年後見制度と異なり、家庭裁判所等の監督を受けることはありません。
(なお、遺言では生前の財産管理はできません。)

 
また、信託する財産は遺産分割協議の対象外となるため、ご本人の相続時に遺産分割協議を行うことなく、特定の相続人等に財産を承継させることができます。
(ただし、他の相続人の遺留分への配慮が必要です。)

 
さらに、ご本人が亡き後の、次の承継者、更に次の承継者と、次世代への承継先も決めることができます。
(なお、遺言では承継の順番を決めることはできません。)

 
このように、遺言や成年後見ではできないことを実現できる制度であることから、円滑な財産承継を実現する手法の1つとして、家族信託が注目されています。
 
ただし、家族信託も万能ではありません。
 
メリットだけでなく、デメリットについても理解したうえで手続きを進める必要があります。

  

2. 家族信託のメリットとデメリット

 

 

2-1. メリット

 
まず、メリットについては、次の点が挙げられます。
 
◎本人の財産の管理・運用・処分を、信頼できる家族に託すことができる。
(成年後見制度と異なり、家庭裁判所等の監督を受けることがない)

 
◎信託する財産は遺産分割協議の対象外となるため、本人の相続時に遺産分割協議を行うことなく特定の相続人等に財産を承継させることができる。
(ただし、遺留分の問題あり)
 
◎本人が亡き後の、次の受益者、更に次の受益者と、複数世代にわたって承継先を決めることができる。
(ただし、信託開始から30年経過後、新たに受益権を取得した受益者が死亡した時点で信託は終了する)

 
◎共有不動産の管理・運用・処分をスムーズに行うことができる。
 
◎贈与よりも所有権移転コストが安い。

  贈与 信託

登録免許税
(固定資産評価額 × 税率)

0.2% 土地 0.3%
建物 0.4%
不動産取得税 あり なし

 

2-2. デメリット

 
一方で、次のようなデメリットが挙げられます。
 
・認知症が進むなど、意思能力がなくなると信託契約ができない。
 
・信託契約は原則として契約時から効力が発生することから、当事者(特に委託者)の意思が固まらないと、手続きを進めることが難しい。
 
・当事者(委託者と受託者)だけで信託契約の締結ができるため、家族関係に問題がある場合、後々トラブルが発生するリスクがある。
 
・相続発生後、遺留分に関するトラブルが発生するリスクがある。
 
・受託者は無限責任を負うことになる。
(信託取引で生じた債務について、信託財産で支払いができない場合は、受託者自身の固有の財産で支払わなければならない)

 
・ローン等の債務は信託財産にならない。
(既存ローンの取り扱いについては金融機関等との調整が必要)

 
・信託期間中、受託者には、帳簿等の作成・報告(毎年1回受益者に報告)・保存(10年間)の義務がある。
 
・信託財産から収益(3万円超/年)が発生する場合、受託者は、信託期間中、税務署に計算書等を提出する必要がある。
 
・信託不動産の損失と信託をしていない不動産の損益通算ができず、また、損失を翌年に繰り越すことができない。
 
・家族信託は財産管理のための制度であるため、本人の施設の入居契約などはできない。
(別途、任意後見制度などで対応)

 
・信託口口座(信託された金銭を管理するための口座)を開設できる金融機関が少ない。
(必要に応じて、受託者名義の「信託専用口座」(普通預金口座)で対応)

 
これらのデメリットについて、当てはまらない、あるいは対処可能であれば、家族信託は有力な財産承継の手法になると思います。
 
続いて、家族信託のスキーム(設計、枠組み)について見ていきましょう。

  

3. 家族信託のスキームについて

 

 
家族信託は、ご本人の財産の管理・運用・処分について、個別の家族のニーズにマッチするように、かなり柔軟な設計が可能です。
 
家族信託のスキームを決定するにあたっては、次の項目について検討します。
 
一つ一つ見ていきましょう。
 

3-1. 家族信託の目的

 
「なぜ、家族信託をするのか」。
 
改めて、家族信託の目的を整理します。
 
例えば、次のようなケースが考えられます。
 
□ 認知症対策・・・本人が認知症などで判断能力が衰えたときのために備えたい
 
□ 生前の財産管理対策・・・本人が自分で財産管理ができなくなったときのために備えたい
 
□ 遺産分割・遺留分対策・・・「誰に、何を相続させるか」をあらかじめ決めておきたい
 
□ 共有財産対策・・・共有となっている財産(自宅、アパート、駐車場等)の管理・運用・処分の方法を決めたい
 
□ 複数世代にわたる承継対策(受益者連続型)・・・複数世代にわたって財産の承継先を決めたい(配偶者 → 子 → 孫の順に承継させるなど)
 

3-2. 信託する財産

 
次に、信託する財産について検討します。
 
信託の対象となる財産としては、主に次のものが考えられます。
 
□ 不動産・・・自宅、アパート、駐車場、別荘、地方の土地など
 
□ 現預金・・・現金、預貯金
 
□ 有価証券・・・自社株、上場株式、投資信託、債券など
 

3-3. 家族信託における各々の役割について

 
家族信託における家族等の役割は、次の図ようになります。
 

家族信託における家族等の役割

 
そこで、「誰が、どの役割となるのか」について整理・検討します。
 
□ 委託者・・・財産を預ける人。
 
□ 受託者・・・財産を預かり、管理・運用・処分する人。
 
□ 受益者・・・財産から生じた利益(売却代金、賃料収入、利息、配当等)を受け取る人。通常は「委託者」と「受益者」は同一人物となる
 
その他に、必要に応じて、次の人を定めるかどうか検討します。
 
□ 予備の受託者・・・受託者に万が一のこと(死亡、認知症、破産等)があったときのための予備となる人。
 
□ 次順位の受益者・・・受益者が亡くなった場合に、次の受益者となる人。
(受益者連続型)

 
□ 受益者代理人・・・受益者の代理人として、財産の管理・運用・処分について受託者に指示する人。
(家族、親族、専門家等)

 
□ 信託監督人・・・受益者を保護するために、受託者を監視・監督する人。
(家族、親族、専門家等)

 

3-4. 信託する財産の管理・運用・処分の方法

 
次に、信託する財産の管理・運用・処分の方法を検討します。
 
例えば、次のように具体的に定めることができます。
 
・家族信託に関して生ずる一切の必要経費等の、信託金融資産からの支払い。
(公租公課、保険料、管理費及び修繕費、敷金保証金等の預り金の返還金、管理委託手数料、登記費用、不動産売却・購入や建物建設・建物解体等に要する費用等)

 
・受益者の生活・介護・療養・納税等に必要な費用の、信託金融資産からの支払い。
 
・信託不動産の維持・保全・修繕。
 
・信託不動産の第三者への賃貸。
 
・信託不動産の換価処分、新たな土地・建物の購入、開発、建設、建替え、解体、土地の境界確認作業、土地の地目変更・分筆・合筆、建物に係る滅失・建物表題等の表示に関する登記、所有権保存・移転等の権利に関する登記等。
 
・信託株式の会社への信託通知、株式の譲渡承認に関する手続き。
 

3-5. 信託報酬の有無

 
受託者に対して、財産の管理・運用・処分を任せることの対価として、信託報酬を支払うかどうかについても検討します。
(一般的には無報酬となることが多いです。)

 

3-6. 家族信託の終わらせ方(信託期間と、残余財産の帰属先)

 
最後に、
①いつ、どうなったら家族信託を終了させるのか(信託期間)
②家族信託が終了したら、信託財産を誰に帰属させるのか(残余財産の帰属先)
について検討します。

 
①信託期間については、次のケースが考えられます。
 
□ 受益者が死亡したときに信託が終了
 
□ いつでも、受託者と受益者の合意により信託が終了
 
②残余財産の帰属先については、次の人が考えられます。
 
□ 受益者が死亡した場合は、受益者の相続人に帰属
 
□ 受益者が死亡した場合で、受益者の相続人が既に死亡していたときは、さらにその相続人に帰属
 
□ 受益者が死亡した場合は、受益者の法定相続人(法定相続割合、または、協議)に帰属
 
□ 受託者と受益者の合意により信託が終了した場合は、終了時の受益者に帰属
 
 
ここまで、家族信託の基本的な知識について解説してきました。
 
次に、家族信託の手続きの流れ・方法について見ていきましょう。

  

4. 家族信託の手続きの流れ・方法

 

 
家族信託の手続きを専門家に依頼する場合の手続きの流れ・方法は次のようになります。
(以下は、当事務所で手続きをサポートする場合の手続きの流れ・方法になります。)
 
1. 家族の目的、家族構成、財産状況、権利関係等をヒアリング

2. 家族信託(財産承継)についてのご提案書を作成(有料)
※手続き全体の費用(当事務所報酬、公証役場手数料、登記費用等の概算)についてもご案内します。
※財産承継手続きの手法として、遺言書作成や任意後見手続き等を併せてご提案する場合があります。

3. 家族信託(財産承継)スキームを決定

4. 信託契約書(案)等を作成
※必要に応じて、遺言書(案)や任意後見契約書(案)等を併せて作成する場合があります。

5. 関係各所(公証役場、金融機関、登記担当司法書士、税理士等)と事前調整

6. 契約書類等の内容の最終確認

7.公証役場にて信託契約公正証書等を作成
※必要に応じて、遺言公正証書や任意後見契約公正証書等を併せて作成する場合があります。

8. 必要に応じて、金融機関にて信託口口座または信託専用口座を開設、及び、信託登記を申請

 9必要に応じて、その他関係各所へ連絡(火災保険の契約内容の変更、引き落し口座の変更手続き等)

10. 必要に応じて、税務署に信託の計算書等を提出(受託者)、及び、不動産所得の確定申告(委託者)
 
 
以上、家族信託のメリット・デメリット、スキームなどの基本的知識、手続きの流れ・方法について解説してきました。
 
最後に、当事務所で家族信託手続きをサポートしたご家族の具体的事例をご紹介します。

  

5. 家族信託の具体的事例・実績(お客様の声)

 

 
あなたのケースと類似する問題解決事例があるかもしれません。
ぜひご参考になさってみてください。
 
※お客様のご年齢はサポート当時のものです。

 

<事例 1>
じっくりと我々の話を聞いてもらえて、「この事務所なら時間を気にしないで進められそう」と思いました

実家を可能な限り次世代に承継することを目的とする、受益者連続型の家族信託手続きサポート 埼玉県戸田市(物件:東京都杉並区西荻南) Y.I様 62歳

 
 当事務所がある西荻窪の商店街にご実家をお持ちのY.I様とその妹様。
 「家族信託を考えていまして」と昨年末にご相談に見えました。
 詳しくお話を聞くと、ご実家は店舗兼住宅で、現在はご両親が施設に入っているため空き家になっているとのこと。
 そのご実家を、「今後は賃貸に出して両親(父90歳代、母80歳代)の介護費や生活費に充てて、両親の孫の世代までこの実家を遺したい」とのご希望をお持ちでした...
 
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<事例2>
全部手配してくれたので助かりました

亡き伯母の遺産整理業務、母の所有不動産の管理・運用・処分を目的とする家族信託手続きサポート 東京都西東京市(物件:東京都西東京市、静岡県熱海市) M.M様 60

 
 独り身の伯母様(当時89歳)と、その妹であるお母様がいらっしゃるM.M様。
 伯母様は施設に入居していて、体の自由が利かなくなってからは、M.M様が伯母様の預金の管理を任されていました(任意代理人)。
 そんな中、伯母様に相続が発生。
 預金を管理していたとはいえ、預金引き出し後の現金の使途までは分からず、かつ、直近での親族に対する贈与や貸付けの金額が多く、相続財産の全体像が不透明だったため、遺産分割や相続税申告手続きをどうすればいいのかお困りでいらっしゃいました。
 また一方、亡き伯母様と年齢が近いお母様の財産の管理についても、不安をお持ちでいらっしゃいました...
 
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<事例3>
今後相続の時もワンストップでお願いできるので、とてもあり難いと思います

父の所有不動産の管理と円滑な承継を目的とする、受益者連続型の家族信託手続きと公正証書遺言作成サポート 東京都杉並区 K.I様 50

 
 
 4年前に、姉弟間の不動産売買をサポートさせていただいたK.I様。
 今回は、お父様名義の不動産の管理と相続対策について、具体的に相談したいとご連絡をいただきました...
 
この事例の全文を読む >


 

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