相続人は必ず遺言書の内容に従わなければならない?

こんにちは、財産承継コンサルタント/行政書士の鉾立です。

今回は、遺言の作成に関してよくいただく質問に、Q&A形式で回答します。

 


 

Q.
母の相続人は、私の兄と、弟の私だけになります。

兄が家業を継いでいることもあり、私は母の財産を相続するつもりはありません。

ところが母から、「あなたにも私の財産を相続させる内容で遺言書を書いたから」と言われています。

私は財産などいらないのですが、どうすればいいのでしょうか?

 

A.
相続人は、遺言書の内容に必ず従わなければならないのでしょうか?

この点につき、書籍『くらしの相続Q&A』/伊藤崇(編著)には、次のように解説されています。

「遺言は遺言者の最終意思であり、相続人はこれに拘束されます。

しかしながら、相続人全員が遺言書の記載内容に反対である場合にまでこれに拘束される必要はなく、その場合には、相続人間で別途協議を行い、自分たちの納得する遺産分割を行うことができます。

もっとも、遺言書で遺言執行者が選任されている場合については問題があります。

遺言執行者が選任された場合、遺言執行者は相続財産についての管理処分権を有するとともに、遺言内容を実現する義務を負います(民法1012条1項)。

そして、相続人は遺言執行者の遺言執行を妨げることができません(民法1013条)。

したがって、理論上は、相続人全員の合意があったとしても、遺言書と異なる遺産分割は許されないようにも思われます。

とはいえ、このような結論は誰も望むものではなく、理論上の整合性については諸議論があるものの、結論としては、遺言執行者の了解を得た上で遺言と異なる遺産分割をすることは許されると解する見解が有力です。」

つまり、お母様の相続発生後、あなたとお兄様とで、別途、自分たちの納得する内容で遺産分割協議を行うことができます。

もっとも、遺言に遺言執行者として第三者が指定されている場合は、遺言執行者の了解を得てから遺産分割協議を行うべきでしょう。

 


 

以上、ご参考になさってみてください。

では、次回の【財産承継ミニセミナー】でまたお会いしましょう。

 

※ご参考
公正証書遺言作成手続きの流れ・手順・ポイント

この記事を執筆している専門家
鉾立 栄一朗

財産承継コンサルタント
/行政書士・宅地建物取引士

行政書士 鉾立榮一朗事務所 代表
Change&Revival株式会社 代表取締役 

法律に関わる各種手続きでお困りの方を “専門家の知恵” と “最適な手続き” でバックアップする法律手続アドバイザー。

会社員時代、実家の金銭問題をそばで支えた体験から、事業や財産の問題で困っている人のサポート役になろうと決意。

合同法務事務所で働きながら行政書士の資格を取得するも、流れ作業的な書類作成・申請手続代行といった依頼者の想いや意思決定プロセスに関われないポジションに限界を感じ、相談業務を習得すべく経営(企業再生)コンサルティング会社に入社。

地域金融機関の専属アドバイザーとして年間50件以上の顧客相談に対応し、「身近に相談できる人がいない」、「知り合いに相談してみたが、満足な回答が得られない」と悩む企業や個人の経営問題・財産問題の解決に従事する。

専門は、相続・遺言、贈与・売買、営業許認可申請等の各種法務実務の実践。相談者の悩みを解決する最適な手続き・手法を提案し、必要に応じて適材適所、各分野の専門家をコーディネートする。

家族は、妻と息子と猫(キジトラ雄)。

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