本人が認知症の場合、遺言書は作れない?

こんにちは、財産承継コンサルタント/行政書士の鉾立です。

今回は、遺言の作成に関してよくいただく質問に、Q&A形式で回答します。

 


 

Q.
私の祖母は2年前に脳梗塞になり、現在は病院のベッドで寝たきりの状態です。

会話は辛うじてできますが、認知症が進んでおり、孫である私のことをときどき誰だか分からなくなっているようです。

この場合、孫の私に財産を相続させるという内容の遺言書を作成することはできるでしょうか?

 

A.
まず、たとえ認知症であったとしても、遺言を作成することができない、というわけではありません。

公正証書遺言を作成する場合、遺言の作成時に「遺言の内容と遺言の結果を理解するのに必要な能力」、すなわち遺言能力が認められれば、公正証書遺言を作成することはできます。

この遺言能力は、次の3つの観点から公証人が判断することになります。

1. 自分のことが誰だか分かっている
2. 自分の財産のことが分かっている
3. 財産を誰に渡すのか分かっている

ご質問では、「孫の私に財産を相続させるという内容の遺言書を作成することはできる
でしょうか?」とのことですが、「孫の私のことを誰だか分からなくなっている」となると、現時点では公正証書遺言の作成は難しいと思われます。

以前、当事務所であるお客様の公正証書遺言の作成をサポートした際、次のようなことがありました。

有料老人ホームに入居している認知症を発症している方の遺言の作成案件でした。

本人にお会いしたところ、冗談をよく話すユーモアのある方、という印象だったのですが、公証人が、本人に名前を教えてください、と話しかけたところ、なぜか自分の名前が出てきません。

何度も繰り返し本人に名前を尋ねても、首をかしげながら違う人の名前を言うなど、
どうしても自分の名前を思い出せません。

結局、この方には遺言能力がない、と公証人に判断され、公正証書遺言を作成することはできませんでした。

重要なので繰り返します。

1. 自分のことが誰だか分かっている
2. 自分の財産のことが分かっている
3. 財産を誰に渡すのか分かっている

最低限、この3つのことを本人が答えられないと公正証書遺言の作成は難しい、と覚えておいてください。

そうなる前に、早めに遺言を作成することをお勧めします。

 


 

以上、ご参考になさってみてください。

では、次回の【財産承継ミニセミナー】でまたお会いしましょう。

 

※ご参考
公正証書遺言作成手続きの流れ・手順・ポイント

この記事を執筆している専門家
鉾立 栄一朗

財産承継コンサルタント
/行政書士・宅地建物取引士

行政書士 鉾立榮一朗事務所 代表
Change&Revival株式会社 代表取締役 

法律に関わる各種手続きでお困りの方を “専門家の知恵” と “最適な手続き” でバックアップする法律手続アドバイザー。

会社員時代、実家の金銭問題をそばで支えた体験から、事業や財産の問題で困っている人のサポート役になろうと決意。

合同法務事務所で働きながら行政書士の資格を取得するも、流れ作業的な書類作成・申請手続代行といった依頼者の想いや意思決定プロセスに関われないポジションに限界を感じ、相談業務を習得すべく経営(企業再生)コンサルティング会社に入社。

地域金融機関の専属アドバイザーとして年間50件以上の顧客相談に対応し、「身近に相談できる人がいない」、「知り合いに相談してみたが、満足な回答が得られない」と悩む企業や個人の経営問題・財産問題の解決に従事する。

専門は、相続・遺言、贈与・売買、営業許認可申請等の各種法務実務の実践。相談者の悩みを解決する最適な手続き・手法を提案し、必要に応じて適材適所、各分野の専門家をコーディネートする。

家族は、妻と息子と猫(キジトラ雄)。

毎月第1土曜日に『無料個別相談』実施中。
https://www.hokodate-jimusyo.com/soudankaib.html

鉾立 栄一朗をフォローする
遺言
シェアする
鉾立 栄一朗をフォローする
財産承継ミニセミナー