法定相続分とは?法的に、誰が、どれだけもらえる権利がある?

こんにちは、財産承継コンサルタント/行政書士の鉾立です。

今回は、相続手続きに関してよくいただく質問に、Q&A形式で回答します。

 


 

Q. 法定相続分とは、どのように決められているのでしょうか?
法的に、誰が、どれだけもらえる権利があるのでしょうか?

夫が亡くなりました。

私たち夫婦には子供がいないため、私と、夫のきょうだいと、疎遠になっている甥と姪が相続人になることが分かりました。

夫のきょうだいと甥姪に相続の意向について聞いたところ、「法定相続分を希望します」との返答がありました。

私は相続でもめたくないため、彼らには希望どおり法定相続分を渡そうと思っています。

ところで、法定相続分は、どのように決められているのでしょうか?
誰が、どれだけもらえる権利があるのでしょうか?

 

A. 法定相続分は、民法(900条)に定められています。

法定相続分とは、民法(900条)に定められている、法定相続人各人に割り当てられた相続分のことを言います。

 

誰が、どれだけもらえる権利があるのか?

法定相続分は、誰が相続人になるかによって決まっています。

例えば、相続人が、配偶者と子供2人(A、B)の場合、各人の法定相続分は、

  • 配偶者:2分の1
  • 子供A:4分の1
  • 子供B:4分の1

となります。

 

【相続人と法定相続分のまとめ表】

相続人

法定相続分

①配偶者のみ場合 配偶者が全部
②配偶者と直系卑属(子供・孫等)の場合 ・配偶者:2分の1
・直系卑属:(2人以上のときは全員で)2分の1
③直系卑属(子供・孫等)のみの場合 直系卑属が全部
④配偶者と直系尊属(父母・祖父母)の場合 ・配偶者:3分の2
・直系尊属:(2人以上のときは全員で)3分の1
⑤直系尊属(父母・祖父母等)のみの場合 直系尊属が全部(2人以上のときは全員で等分)
⑥配偶者と兄弟姉妹の場合 ・配偶者:4分の3
・兄弟姉妹:(2人以上のときは全員で)4分の1
⑦兄弟姉妹のみの場合 兄弟姉妹が全部(2人以上のときは全員で等分)

 

なお、相続人に兄弟姉妹がいる場合(上記表の⑥、⑦)、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)の相続分の2分の1となります。(民法900条4号)

この場合の法定相続分は、次の計算式によって算出することができます。

 

【全血・半血兄弟姉妹の相続割合の計算式】

 

遺言書の内容は法定相続分に優先する

ただし、亡くなった方が法的に有効な遺言書を作成していた場合は、遺言書の内容の方が法定相続分に優先します。

この場合、死亡によって即座に遺言書の効力が生じることになります。

 

遺産分割協議の内容は法定相続分に優先する

亡くなった方が法的に有効な遺言書を作成していなかった場合は、死亡によって相続人各人が法定相続分を取得することになります。

もっとも、後日、相続人全員の遺産分割協議によって法定相続分とは異なる内容で遺産の分割を決定すると、死亡の時にさかのぼって遺産分割の効力が生じることになります。
(これを、「遺産分割の遡及効」と言います。)

つまり、遺産分割協議の内容の方が法定相続分に優先します。

 

実際の相続手続きにおける法定相続分

実際の相続手続きでは、

  • 「自分は不動産のみを相続したい」
  • 「自分は金融資産のみを相続したい」
  • 「自分は相続しなくていい」

など、各相続人が、法定相続分どおりに相続することを望まないケースがよくあります。

そこで、相続手続きの実務上は、亡くなった方が法的に有効な遺言書を作成されていない場合に、まず相続人各人の法定相続分を明らかにしてから各人に相続の意向を確認し、続いて相続人全員で遺産分割協議を行うことが多いです。

もちろん、遺産分割協議を行わないで、法定相続分の割合どおりに相続手続きを行うことも可能です。

 


 

以上、ご参考になさってみてください。

では、次回の【財産承継ミニセミナー】でまたお会いしましょう。

 

【関連記事】
相続・遺産分割・遺言執行手続きの流れ・ポイント

 

この記事を執筆している専門家
鉾立 栄一朗

財産承継コンサルタント
/行政書士・宅地建物取引士

行政書士 鉾立榮一朗事務所 代表
Change&Revival株式会社 代表取締役 

法律に関わる各種手続きでお困りの方を “専門家の知恵” と “最適な手続き” でバックアップする法律手続アドバイザー。

会社員時代、実家の金銭問題をそばで支えた体験から、事業や財産の問題で困っている人のサポート役になろうと決意。

合同法務事務所で働きながら行政書士の資格を取得するも、流れ作業的な書類作成・申請手続代行といった依頼者の想いや意思決定プロセスに関われないポジションに限界を感じ、相談業務を習得すべく経営(企業再生)コンサルティング会社に入社。

地域金融機関の専属アドバイザーとして年間50件以上の顧客相談に対応し、「身近に相談できる人がいない」、「知り合いに相談してみたが、満足な回答が得られない」と悩む企業や個人の経営問題・財産問題の解決に従事する。

専門は、相続・遺言、贈与・売買、営業許認可申請等の各種法務実務の実践。相談者の悩みを解決する最適な手続き・手法を提案し、必要に応じて適材適所、各分野の専門家をコーディネートする。

家族は、妻と息子と猫(キジトラ雄)。

毎月第1土曜日に『無料個別相談』実施中。
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