親族間売買で分割払いはできる?住宅ローンを組まない方法は?【親族間売買FAQ】

財産承継ミニセミナー:親族間売買で分割払いはできる?住宅ローンを組まない方法は?(親族間売買FAQ #09)|行政書士×宅建業 鉾立榮一朗事務所 親族間売買

行政書士・宅地建物取引士 鉾立榮一朗のプロフィール写真この記事を書いた専門家
鉾立 栄一朗(ほこだて えいいちろう)
行政書士・宅地建物取引士/財産承継コンサルタント
行政書士 鉾立榮一朗事務所 代表/Change&Revival株式会社 代表取締役
宅地建物取引業免許 東京都知事(3)第94647号
2008年より親族間売買の専門サポートを行い、サポート実績は60件超。分割払いによる親族間売買のサポートも複数取り扱う。▶ プロフィール詳細はこちら

Q. 親族間売買で、住宅ローンを組まずに代金を分割払いにすることはできますか?

A. はい、できます。

住宅ローンなどの金融機関からの借り入れを利用せず、親族間で直接、売買代金を分割で支払う方法を選択することも可能です。

ただし、後になって法律上・税務上の問題が生じないよう、契約書類を適切に整備しておく必要があります。

また、売主が高齢の場合は、分割払いの途中で相続が発生した場合の取り扱いについて知っておく必要もあります。

以下では、分割払いを行う際の2つの方法(パターン)と、それぞれの注意点、税務上のポイントについて、当事務所の実際のサポート事例を交えて解説します。

【動画で解説】親族間売買で分割払いはできる?住宅ローンを組まない方法は?(1分26秒)

お急ぎの方や移動中の方は、まずこちらの動画(1分26秒)でポイントをご確認ください。

1. 分割払いを検討できる前提条件

親子間売買における分割払いは、次のような条件が揃っている場合に検討しやすい方法です。

①対象不動産に既存の住宅ローン(抵当権)が残っていないこと

既存の住宅ローンが残っている場合は、原則として所有権移転登記時に既存ローンを完済し、抵当権を抹消する必要があります。

②売主が売買代金の一括受領を必要としていないこと

売主が、売買代金についてまとまった金額の受領を必要としていない場合は、分割払いを選択しやすくなります。

例えば、 「老後の生活資金として、年金のように月々受け取りたい」という希望がある場合は、分割払いが売主のニーズに合致するケースが多いです。

一方で、売主がまとまった資金を必要としている場合は、「売買代金の一部を一括で支払い、残金を分割で支払う」といった方法を取るケースもあります。

親族間の関係性にもよりますが、一般的な傾向としては、

  • 親子間・きょうだい間:合意ができれば分割払いも馴染みやすい
  • 親戚間:売主が一括受領を望むケースが多く、分割払いは馴染みにくい

という傾向が見られます。

③分割払いの条件について親族間で合意できること

●売買代金

●毎月返済額

買主にとって無理のない毎月返済額(年間返済額 = 年収の35%以内が目安)と、売主が必要とする毎月受領額を確認します。

●返済期間

毎月返済額が決まると返済期間が決まりますが、売主が高齢の場合、返済期間を長く設定しすぎると、税務上「実質贈与」と認定される可能性があるため注意が必要です。

●利息

通常の住宅ローンの金利水準を参考に設定するのが一般的です。

無利息とする場合は、利息相当分が「贈与」と扱われます。

ただし、基礎控除(年間110万円)の範囲内であれば課税されません。

2. 分割払いの2つの方法(パターン①不動産売買契約+準消費貸借契約、パターン②不動産月賦(割賦)売買契約)

親族間で売買代金を分割払いする場合、主に次の2つの方法(スキーム)が考えられます。

分割払いの2パターン比較

  パターン①
不動産売買契約+準消費貸借契約
パターン②
不動産月賦(割賦)売買契約
所有権の移転(登記)時期 売買契約と同時に先に移転(登記) 売買代金を全額支払い終えた後に移転(登記)
メリット 契約締結時点で所有権の移転を確定できる 売買代金の支払状況と所有権の帰属が一致する
デメリット 返済不能になった際の回収手続きが煩雑(再売買、強制執行など) 所有権の移転(名義変更)が完済まで先延ばしになる
向いているケース 早期に名義を移す必要がある(相続対策、リフォームローンの利用等) 支払いが滞った場合に、契約解除・明け渡しで比較的簡便に対応したい

パターン①:不動産売買契約+準消費貸借契約

不動産売買契約を締結すると同時に所有権を買主に移転(登記)し、売買代金相当額については、売主・買主間で準消費貸借契約を締結して、将来にわたり分割で返済していく方法です。

実務上は、当事務所がサポートした事例(後述)のように、子が親名義の不動産を早期に自分の所有(名義)としたいという希望がある場合に、この方法が選択されるケースがあります。

準消費貸借契約は、公正証書として作成することで、万が一返済が滞った場合でも裁判所の判決を経ずに強制執行が可能となり、契約の実効性が高まります。

また、買主が将来、第三者に売却する際に確実に残代金を支払ってもらうため、抵当権を設定する方法もあります。

パターン①で相続が発生した場合の取り扱い

なお、このパターン①において、分割払いの途中で売主に相続が発生した場合は、

  • 不動産の所有権は買主のまま(変わらない)
  • 残代金の請求権(債権)が売主の相続人に承継される

という扱いになります。

有効な遺言書があれば、原則として遺言書の内容に従って債権の承継者が決まります。

遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。

もし、買主が残代金の請求権(債権)を相続した場合は、債権者(売主の相続人)と債務者(買主)が同一となるため、民法上の「混同」により、その部分の債権は消滅します。

ただし、他の相続人も残代金の請求権(債権)を相続した場合は、

  • 買主が相続した債権部分 → 混同により消滅
  • 他の相続人が承継した債権部分 → 買主は支払う必要がある

という扱いになります。

パターン②:不動産月賦(割賦)売買契約

不動産割賦払(月賦)売買契約を締結し、売買代金を分割で支払い、全額の支払いが完了してから所有権を移転(登記)する方法です。

この方法では、分割払いを一定期間(例えば3か月以上)滞納した場合には、無条件で契約を解除し、不動産を明け渡すという条項を設けることもできます。

また、支払いが完了するまでの間、固定資産税や火災保険料についても買主負担とする(契約締結日以降)条項を設けることもできます。

パターン①と異なり、売買代金の支払い状況と所有権の帰属が一致するという特徴があるため、売主にとっては回収リスクをコントロールしやすい方法といえます。

パターン②で相続が発生した場合の取り扱い

なお、このパターン②において、分割払いの途中で売主に相続が発生した場合は、

  • 不動産および売主の地位(残代金請求権・契約解除権・固定資産税の納税義務等)が相続の対象となる
  • 買主は、不動産および売主の地位を相続した人に対して残代金の支払いを継続する

という扱いになります。

有効な遺言書があれば、原則として遺言書の内容に従って不動産および売主の地位の承継者が決まります。
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。
もし、買主が不動産および売主の地位を相続した場合は、
  • 買主が売主の残代金請求権(債権)を承継する
  • 買主は同時に債務者でもあるため、債権と債務が同一人に帰属する

という扱いになり、残代金は民法上の「混同」により消滅し、買主の名義に相続登記することになります。

ただし、他の相続人も不動産および売主の地位を相続した場合は、

  • 買主が承継した債権部分 → 混同により消滅
  • 他の相続人が承継した債権部分 → 買主はその相続人に支払う必要がある
  • 買主と他の相続人の共有名義で相続登記する

ことになります。

3. 契約書類を整備する際のポイント

いずれのパターンを選択する場合も、後になって法律上・税務上の不備が問題とならないよう、契約書類を適切に整備することが重要です。

具体的には、次のような対応を行います。

  • 契約書に自署・実印を押印する
  • 契約書に収入印紙を貼付する
  • 必要に応じて、契約書を公正証書として作成する
  • 必要に応じて、公証役場で確定日付を取得する
  • 分割払いの返済予定表を作成する
  • 必要に応じて、分割払いの途中で相続が発生したことを想定して遺言書を作成する

特に、支払いの遅延や途中で返済が困難になった場合の取り扱い(遅延損害金の利率、解除条件など)について、あらかじめ契約書に明記しておくことが望ましいでしょう。

なお、売買契約締結後は、銀行間で送金を行い、通帳に記録を残しておくと良いでしょう。

また、滞りなく返済を続けるために、定額自動送金または自動引き落としの設定を行っておくことをお勧めします。

4. 税務上の注意点(贈与税・不動産取得税・譲渡所得税・固定資産税)

買主側:贈与税・不動産取得税

親族間売買でまず注意すべきなのが、「売買代金をいくらにするか」という点です。

親族間といえども、著しく低い価額で不動産を売買した場合、その不動産の「時価」と支払った対価との差額は、 売主から贈与を受けたものとみなされ、買主に贈与税が課税される可能性があります。

「親族間売買における低額譲渡とみなし贈与の仕組み。時価と売買代金の差額が税務署に贈与と認定される概念図」

(いわゆる「みなし贈与」。 ※ご参考 国税庁HP 『著しく低い価額で財産を譲り受けたとき』 )

また、無利息(または一般的な住宅ローン金利より著しく低い利率)で分割払いを行う場合、利息相当額が贈与とみなされる可能性がありますが、贈与税の基礎控除(年間110万円)の範囲内であれば、通常、贈与税の課税は生じません。

買主については、不動産の取得に伴い、原則として不動産取得税が課税されます。

ただし、取得した不動産の築年数や、買主自身が居住する住宅である場合など、一定の要件を満たせば、課税標準からの控除(軽減措置)が適用されるケースがあります。

売主側:譲渡所得税

売主については、土地や建物を売った代金から、

・取得費(不動産を購入したときの代金など)
・譲渡費用(売却時の仲介手数料、印紙代など)

を差し引いて所得が生じる場合、譲渡所得税(所得税・復興特別所得税・住民税)が課税されます。

多額の譲渡所得税が課税される場合、通常の売買(売買代金の一括受領)であれば、受け取った売買代金から納税すれば済みますが、スキーム①(不動産売買契約+準消費貸借契約)を採用し、先に所有権を移転(登記)すると、税務上はその時点で「譲渡が成立した」と扱われるため、売主は譲渡所得税の納税資金を自己資金で用意する必要があります。

そのため、スキーム検討の段階から、譲渡所得が発生するかどうかのシミュレーションを行っておくことが重要です。

なお、親族間の不動産売買では、売主と買主の関係が親子など特別な間柄である場合、居住用財産を譲渡した場合の「3,000万円特別控除」の特例が使えないので注意が必要です。
(※参考:国税庁HP 『マイホームを売ったときの特例』)

譲渡所得がある場合は、確定申告が必要となります。

所得税の申告時期は、売買を行った年の翌年2月16日から3月15日までとなります。

実際の税務申告手続きについては、税務署に相談しながらご自身で行う方もいらっしゃいますが、当事務所(当社)ではご希望に応じて、パートナー税理士をご紹介しております。

固定資産税

固定資産税の負担者については、原則として以下の通りとなります。

パターン①:売買契約+準消費貸借契約 ⇒ 買主(名義が移るため)

パターン②:不動産月賦(割賦)売買契約 ⇒ 売主(完済まで名義が残るため)

ただし、パターン②の場合でも、買主が負担するとの合意ができれば、契約書において柔軟に取り決めることも可能です。

5. 当事務所の実際のサポート事例

分割払い(パターン①:不動産売買契約+準消費貸借契約)による親子間売買の実際のサポート事例をご紹介します。

M.F様(60歳)/大阪府大阪市
(物件:東京都豊島区)

研修医として東京で生活する息子様のために、5年前にローンを組んで豊島区にマンションを購入されたM.F様。

繰上げ返済を進められて、ローンを完済する直前に当事務所へご相談に見えました。

ご相談の内容は、

・マンションを息子に譲渡し、息子の所有としたい
・ただし、自身の共有持分を10分の1程度残しておきたい
・息子からマンションの譲渡代金を長期分割(月10万円程度)で受領したい
・「贈与」とみなされないように適切な契約を結びたい

というものでした。

ポイントは、代金完済後に所有権を移転するのではなく、「契約締結時点で息子の所有としたい」という点だったため、当事務所では、①売買契約と同時に②準消費貸借契約を親子間で締結し、売買代金の支払い債務を息子様が長期にわたってM.F様に返済していく方法(パターン①)を提案させていただきました。

「できるだけ低い価格で売買したい」とのご希望があり、かつ、物件が高値で取引されているタワーマンションだったことから、売買代金の設定についてはパートナーの不動産鑑定士に簡易査定を依頼。(※一般的なマンションの場合は、不動産鑑定士の簡易査定は必須ではありません。)

また、返済計画(月々の返済額・利率)を提案したうえで、売買契約書と準消費貸借契約書(公証役場の確定日付つき)を整備し、登記についてはパートナー司法書士を手配して、トータルで手続きをサポートさせていただきました。

実際にご依頼いただいたM.F様からは、次のようなお声をいただきました。

「手続きを一括でお願いできるワンストップサービスがほしいなあ、と思っていました。
売買、税金、お金のことなど、セットものの相談ができる人がいないなか、総合的にコンサルティングをしていただけそうだったので、これはすごく助かるなと思いました」

(M.F様・60歳・大阪府大阪市)

▶ 事例20の詳細を読む(親子間マンション共有持分売買+準消費貸借契約)

6. まとめ:分割払いを検討する際のポイント

親族間売買における代金の分割払いは、住宅ローンの残債がない(または手持ち資金で完済が可能)、そして売主が代金の一括受領を必要としないケースにおいて、有効な選択肢のひとつです。

検討にあたっては、次の3点を押さえておくことが重要です。

  1. 所有権の移転(登記)時期に応じてパターンを選ぶ
    早期に名義を移したいのか、支払い完了と同時に移したいのか、目的に応じて、
    ①不動産売買契約+準消費貸借契約(所有権を移転する)
    ②不動産月賦(割賦)売買契約(完済後に所有権を移転する)
    のいずれかを選択する。
  2. 契約書類を適切に整備する
    公正証書化、確定日付の取得、返済予定表の作成など、将来のトラブルや税務調査に備えた書類整備を行う。
  3. 税務上のシミュレーションを事前に行う
    特に、買主側の贈与税(みなし贈与)、売主側の譲渡所得税については、事前に確認・シミュレーションをしておくことが重要です。

「うちのケースでも分割払いは可能か」「どちらのパターンが向いているのか」など、より具体的な疑問点について知りたい方は、当事務所の『無料個別相談』をお気軽にご利用ください。

関連記事(親族間売買FAQ)

あわせて読みたい

親族間売買の手続きの流れや税務のポイントについては、以下のメインページで詳しく解説しています。
[→ 親族間売買の基本と手続きの流れを詳しく見る]

当事務所でサポートした親族間売買の相談事例をご紹介します。
あなたのケースと類似する問題解決事例があるかもしれません。
ぜひご参考になさってみてください。
[→ 親族間売買の相談事例・実績一覧(お客様の声)を詳しく見る]

『無料個別相談』のご案内

親族間売買を行うご事情や目的、そして最適な解決策は人(ご家族)それぞれ異なります。
当事務所(当社)では、“専門家の知恵(行政書士×宅建業)” と、お客様のご事情・目的に即した “最適な解決策” で、親族間売買をサポートしています。

このページだけではお伝えし切れない情報も多くありますし、「では、自分のケースではどうなのか?」と思われる方もいらっしゃるかと思います。
個別の疑問にもお答えしていますので、どうぞお気軽にご相談ください。

> メールで相談する

また、メール相談と比べると、「面談」の方が相手に伝わる情報量が圧倒的に多くなります。

当事務所の『無料個別相談』をご利用いただければ、今あなたが必要としている問題解決の方法を、効率的かつ具体的に知ることができます。
どうぞお気軽にご利用ください。

The following two tabs change content below.
鉾立 栄一朗
豊富な知識・経験・事例を持つ「財産承継手続きの専門家」 行政書士 鉾立榮一朗事務所 代表 Change&Revival株式会社 代表取締役 (宅地建物取引業免許 東京都知事(3)第94647号) 行政書士・宅地建物取引士 財産承継コンサルタント 財産・事業に関わる各種手続きでお困りの方を “専門家の知恵” と “最適な手法” でサポートする財産承継手続きの専門家。 20代会社員のとき、実家の金銭問題をそばで支えた体験から、お金や不動産など財産の問題で困っている人のサポート役になろうと決意。 その後、司法書士・行政書士・土地家屋調査士の合同事務所で働きながら、法務手続き実務を体得。 前職の財産・企業再生コンサルティング会社では、地域金融機関の専属アドバイザーとして年間50件以上の顧客相談に対応し、「身近に相談できる人がいない」、「知り合いに相談してみたが、満足な回答が得られない」と悩む個人や企業の財産問題・経営問題の解決に従事する。 専門は、相続・遺言、親族間の不動産売買・贈与、家族信託、会社設立・営業許認可申請等の各種法務実務の実践。 相談者の悩みを解決する最適な手法・手続きを提案し、必要に応じて適材適所、各分野の専門家をコーディネートする。
『無料個別相談』を利用する