遺産分割協議書ですべての財産の相続方法を決める必要はある?

こんにちは、財産承継コンサルタント/行政書士の鉾立です。

今回は、相続手続きに関してよくいただく質問に、Q&A形式で回答します。

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Q. 遺産分割協議書ですべての財産の相続方法を決める必要はあるのでしょうか?

父の相続手続きで、遺産分割協議を進めています。

相続人全員で話し合ったところ、預貯金や株式などの財産の配分は決まったのですが、不動産についてはまだ誰が相続するか決まるまで時間がかかりそうです。

不動産以外の財産については、早めに相続手続きを進めていきたいのですが…。

遺産分割協議書を作成するにあたって、すべての財産の相続方法を決める必要はあるのでしょうか?

 

A. 遺産の一部のみを記載した遺産分割協議書も有効です。

 

1. 遺産の一部のみを記載した遺産分割協議書について

一般的に、遺産分割協議書を作成する際は、1通の遺産分割協議書に亡くなった方の財産のすべてを記載し、またどのように相続するかを記載するのが望ましいでしょう。

なぜなら、財産を分けて、複数の遺産分割協議書を作成するとなると、財産全体として相続人間の公平な配分が難しくなって後々揉めたり、その都度相続人全員の遺産分割協議書への署名・実印押印が必要になるため手続きが煩雑になったりするからです。

もっとも、民法第907条「共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる」と規定されているように、遺産の一部のみを記載した遺産分割協議書を作成することは問題ありません。

例えば、預貯金や有価証券などの金融資産については誰がどのように相続するか決まっていて、不動産については誰がどのように相続するか決まってないときは、金融資産のみの配分を決めた遺産分割協議書を作成しても問題ありません。

 

2. 遺産分割協議が終わっていない場合の相続税申告時の注意点

なお、相続税の申告が必要な場合で、「小規模宅地等の特例」「配偶者の税額軽減の特例」を受けようとするときは注意が必要です。

相続税の申告時までに遺産分割が行われていない財産については、原則として「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減の特例」の適用を受けることはできません。

ただしこの場合、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出しておき、相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が行われた場合は、特例の適用を受けることができます。

この場合、遺産分割が行われた日の翌日から4か月以内に「更正の請求」を行うことができます。

※ご参考 国税庁ホームページ No.4208 相続財産が分割されていないときの申告

【参考記事】
土地の評価額を8割減額できる小規模宅地等の特例とは?
配偶者が多く相続した方が相続税は少なくなる?(配偶者の税額軽減)

 

3. 財産漏れがあった場合の実務上の対応について

実際の相続手続きでは、遺産分割協議書にすべての財産を記載したつもりでも、後から財産が見つかることがあります。

その場合は、原則として再度その財産について遺産分割協議を行うことになります。

もっとも、例えば、

  • 少額の手元現金
  • 少額の預貯金
  • 少額の税金の還付金

などの軽微な財産が見つかったときにまで、再度遺産分割協議を行うのは面倒だと思うこともあるでしょう。

実務的には、後日軽微な財産が見つかった場合でも再度遺産分割協議を行う必要がないように、遺産分割協議書の末尾に次の一文を入れることが多いです。

「相続人〇〇は、その他本協議書に記載なき一切の遺産を取得する。」

 

以上、ご参考になさってみてください。

 

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鉾立 栄一朗
豊富な知識・経験・事例を持つ「財産承継手続きの専門家」 行政書士 鉾立榮一朗事務所 代表 Change&Revival株式会社 代表取締役 (宅地建物取引業免許 東京都知事(3)第94647号) 行政書士・宅地建物取引士 財産承継コンサルタント 財産・事業に関わる各種手続きでお困りの方を “専門家の知恵” と “最適な手法” でサポートする財産承継手続きの専門家。 20代会社員のとき、実家の金銭問題をそばで支えた体験から、お金や不動産など財産の問題で困っている人のサポート役になろうと決意。 その後、司法書士・行政書士・土地家屋調査士の合同事務所で働きながら、法務手続き実務を体得。 前職の財産・企業再生コンサルティング会社では、地域金融機関の専属アドバイザーとして年間50件以上の顧客相談に対応し、「身近に相談できる人がいない」、「知り合いに相談してみたが、満足な回答が得られない」と悩む個人や企業の財産問題・経営問題の解決に従事する。 専門は、相続・遺言、親族間の不動産売買・贈与、家族信託、会社設立・営業許認可申請等の各種法務実務の実践。 相談者の悩みを解決する最適な手法・手続きを提案し、必要に応じて適材適所、各分野の専門家をコーディネートする。